チャーチ(Church’s)

既成靴の常識を作った凄いブランド、それがチャーチ

今は当たり前の事でも、昔は全然違った。この世にそんな事柄がたくさんあります。実は靴もそう。靴には右と左がある、その“あたりまえ”がない時代があったようです。

左右で同じ形の靴を人々が履いていた時代。右足用と左足用で分けて作る、そんな画期的な考え方を既成靴業界に持ち込んだのが、このチャーチというブランドでした。またもう一つ有名な話で、ハーフサイズ展開(0.5cm)で靴を作る考え方を始めたのも、これまたチャーチ。

そんな既成靴の基本を作り、英国靴トップブランドの一つとして業界を牽引し続けてきたチャーチについて、この記事では紹介をしていきたいと思います。

1.まずは知っておきたい、新・旧チャーチについて

現在、革靴市場においてチャーチというブランドは、大きく分けて2つの括りに分けられています。それは、”現行のチャーチ”と、”プラダ買収前のチャーチ”。

チャーチは1999年にプラダグループに買収されたというのは有名な話ですが、靴好き達がその前と後の製品を区別する為、買収前の製品を”旧チャーチ”と呼ぶようになりました。

わざわざ区別をする理由。それは、プラダグループに買収されたタイミングで、一定の仕様変更が行われた事が関わっています。新旧問わず、チャーチには本当に良い製品が多数ありますが、旧チャーチ製品に関しては、既に廃盤となってしまったラストや素材を使用した製品が多く存在しており、それがマニア心をくすぐってしまうのです。

1-1.新・旧チャーチの判別方法

新旧チャーチはプラダグループの傘下となる前後で分けられますが、どう判断するのかという点。様々な要素から年代の判別は可能ですが、一番分かりやすい箇所は、インソールロゴ。

画像にある”LONDON,NEW YORK,PARIS”の表記、靴好きの間では通称【3都市ロゴ】と呼ばれるものです。3都市ロゴのソックシートが使用されていたものは大枠80年代~90年代末前後のものと言われており、それより古い年代のものとなると“LONDON,NEWYORK”の2都市、さらに都市表記のない約50年以上前のものも存在しますが、一部の復刻を除き、3都市ロゴ以前は旧チャーチという認識で問題ありません。

その後、”MILANO”を含む4都市ロゴ、現行の“TOKYO”を含む5都市ロゴと近年にかけて都市数は増えていきますが、”大枠の”4都市ロゴ製品以降、それらはプラダグループ参入後の製品となります。

とは言ってもこれはあくまで大まかなチェック方法で、経験上、結構な量で例外が存在します。全ての製品に対して言える訳ではありませんが、都市数は一番分かりやすい判別方法です。

2.新・旧定番ラスト紹介

プラダ買収後と前では、定番ラストに違いがあります。是非これを知った上で、studio.CBRの商品を見てみて下さい。商品を見るのが、倍以上面白くなると思います。

2-1.現行定番ラスト

出典:BRITISHMADE

では、まずは現行の定番ラストから。旧年代の物と同じものもありますが、違うものもあります。特に人気のあるものだけかいつまんで掲載をしますが、全体的に現代風にアップデートされているラストが多いです。

173ラスト

現行品に使用されている主力ラスト、プラダグループ参入を期に開発されたラストです。コンサルやディプロマット、チェットウィンド等の代表モデルに使用されている鉄板的なラストですので、チャーチが初めてという方はまずこのラストの製品を試して下さい。癖のないラストなので、販売する側としては最もおすすめしやすい部類のラストと感じています。

また当店では接客の際、お客さんのサイズ感を確かめるために、このラストの靴を履いてみてもらうことが多いです。あくまで当店だけの考え方ですが、クロケット&ジョーンズのメインコレクションのオーソドックスなドレスラストと、このチャーチの173ラストが、全革靴の中心と考えています。電話でサイズの問い合わせを頂いた方には、チャーチの173ラストだと、どのサイズ、ワイズがジャストですか?また、履いた感覚はどうでしたか?という質問をすることが多々ありますので、そういう意味でも是非一度試してみてほしいです。これさえ聞くことが出来れば、結構精度の高い返答が出来ます。

81ラスト

フルブローグのバーウッドや、チャッカブーツのライダーに使用されている定番ラスト。ヴィンテージ年代(凡そ70年代頃)から存在しており、チャーチの中でも特に息の長いラストです。こちらのラストも、比較的癖のないフィッテングの為、最初の一足としてお勧め出来ます。

103ラスト

定番プレーントゥのシャノンに用いられるラスト。丸みを帯びたトゥでチャーチの中では比較的カジュアル寄りな見た目になるラストですが、ややノーズは長さをとっている印象で、案外踵も小振り。全体的に見てルーズな印象はなく、硬すぎない職場に勤務されている方であれば、オンオフ兼用で使用している方が多いイメージです。

2-2.旧定番ラスト

以下は、過去に展開をされていたラストです。たまに復刻などで販売をされているケースはあるものの、基本的には大きく再販されることはないので、studio.CBRのようなお店でしか見ることは出来ません。靴の専門誌(最高級靴読本シリーズ、LAST他)などではこういうラストの商品が度々取り上げられますが、”あの雑誌に書いてあったモノは、これなのか!”と思いながら、当店のホームページを見てもらえると、より楽しんで頂けるのではないでしょうか。

73ラスト

173ラストの前身となる、セミスクエアトゥの旧定番ラスト。1940年に誕生し、旧チャーチ年代の製品に主力として使用されていたラストですが、今でも時折復刻して展開される程、根強いファンの多いラストです。尚、ノーズの長さは173ラストに比べると短く、実際のサイズ感は0.25~0.5サイズ程小さく感じる方が多い印象。173ラストと同サイズで選ぶと入らないことがあるので、普通~足長のある方はハーフサイズ上を選んで下さい。(経験上、同じサイズで大丈夫な方も割といるので、この辺りは足形によります)

100ラスト

プラダ買収後の、173ラストと73ラストの切り替わり時期に使用されていた100ラスト。2000年に73ラストの後継ラストの様な立ち位置で使用されましたが、その後2003年の173ラストの登場により切り替わってしまった為、展開時期も短く、当時からのファン以外にはあまり知られていないラストです。余談ですが、現行の173ラストは73ラストのセミスクエアトゥをややスマートにし、100ラストのフィッティングを取り入れて作られたと言われています。サイズ感としても、173ラスト同様に一般的なUKサイズ表記でのサイズ選びで大枠問題ありません。

84ラスト

旧チャーチ年代に展開されていた84ラスト、旧定番の73ラストとよく比較されます。やや内ぶりのエッグトゥが特徴的で、代表作はパンチドキャップトゥのバークロフトとなります。73ラスト同様、実際のサイズ感は0.25~0.5サイズ程小さ目。こちらも173ラストと比べるとハーフサイズ上げて選んだ方が良い場合が多いです。

224ラスト

旧チャーチ年代のシャノンにも使用されていたラスト。この224ラストを用いたモデルは、リブを使わないグッドイヤーウェルテッド製法という少し特殊な製造方法であった事が雑誌でも紹介されています。あまり市場では見かけませんが、サイズ感に関しては103ラスト、224ラスト共に173ラスト同様のサイズを選べば大枠問題ありません。

3.こんなところも違う、新旧素材

チャーチでは新旧チャーチで同じモデルでもラストが異なるように、素材にも変化がありました。今回こちらではその内の一つ、バインダーカーフについて。

チャーチにはバインダーカーフと呼ばれる、一つ人気の素材があります。よく聞くのが、旧チャーチは”ブックバインダーカーフ”を使われている、現行チャーチは”ポリッシュドバインダーカーフ”を使われているという、その類の内容。(後述しますが、現行にもブックバインダーカーフはあります)両方ガラス革の一種ですが、確かに、見た目に若干素材感の違いがあります。その違いがある故、いまだ語られることの多い素材となっています。

ポリッシュドバインダーカーフ

ポリッシュドバインダーカーフは、現行品で定番的に展開される素材の一つで、カーフの表面に特殊な樹脂コーティングが施されています。手入れが比較的容易かつ、天候を気にせず使えるタフに革靴を履きたいという、高級靴ファンの要望に応えてくれる汎用性の高い素材です。

ガラス革と言えば、カーフ表面のキメ細かさなどがあまり関係ない素材なので、素材感”命”、鏡面磨き”命”みたいな方にはあまり向きません。ただ、なぜかチャーチだけは許されているような、そんな風潮を感じます。”ラバーソールよりもレザーソールでしょ”と言いながらも、ダイナイトソールやリッジウェイソールはOK”みたいな風潮と同じです。

ブックバインダーカーフ(旧チャーチ年代)

ブックバインダーカーフは旧チャーチの定番素材。ポリッシュドバインダーカーフとの違いの一つは素材の供給元、タンナーが異なるという点です。ブックバインダーカーフはイギリスのタンナー”ピポディ社”が供給していましたが、プラダグループ買収と同時期に同社は買収されなくなってしまいました。その為、ピポディ社のブックバインダーカーフは、ファンの間で度々話題に挙がる希少素材として知られています。

ちなみに、【ピポディ社のブックバインダーカーフ】はもう生産はされていませんが、現行品でもポリッシュドバインダーカーフとは別にブックバインダーカーフは存在しています。以前、
「ブックバインダーカーフは、ポリッシュドバインダーカーフよりも樹脂コーティングが薄いんですよ」
と旗艦店のスタッフさんから教えて貰った事があります。確かに、ブックバインダーカーフはよく見るガラス革とは少し違ったシワの入り方をするので、なるほどなと思いました。

4.定番的な人気モデル

海外ではロングノーズ仕様のモデルの人気が上がっているようですが、日本ではどちらかというと以下のような、昔から販売をされているクラシックモデルの方が人気があります。まずは、同ブランドの中でも息の長い、レジェンドなシリーズをしっかり覚えておいてもらうのが良いかと思います。

■CONSUL/コンサル

チャーチの看板ストレートチップモデル、コンサル(CONSUL)。マニアの間では役職シリーズといわれ、コンサルは「領事」を表しています。また、主要モデルだけあって素材、色、ソール種類も豊富に展開されていますので、一足目に迷った方はまずコンサルを選んでおけば間違いないです。
ラスト:73/100/173

■DIPLOMAT/ディプロマット

セミブローグモデルのディプロマット(DIPLOMAT)。1945年に誕生し、コンサル同様に役職を表すモデル名で、「外交官」の意味を持ちます。また、007の映画では1995年公開の「ゴールデンアイ」でジェームズ・ボンド役のピアーズ・ブロスナンが着用しています。
ラスト:73/100/173

■CHETWYND/チェットウィンド

フルブローグモデルのチェットウィンド(CHETWYND)。先に紹介したコンサル、ディプロマットと並んでチャーチ御三家と呼ばれる名作です。また、こちらもディプロマット同様に007「ゴールデンアイ」で着用されていました。
ラスト:73/100/173

■GRAFTON/グラフトン

チャーチの中でも、大き目なメダリオンとカントリー調なデザインが特徴のグラフトン(GRAFTON)。オールデンやアレンエドモンズ等のアメリカ靴に見られるロングウイングデザインにも似ていますが、トゥのパーフォレーションが真っ直ぐヒールまで伸びるものとは異なり、こちらのグラフトンは羽根周りのパーフォレーションがヒールまで伸びたデザインです。
ラスト:73/100/173

■BURWOOD/バーウッド

グラフトン同様に大ぶりなメダリオンとカントリー調なデザインが特徴のバーウッド。173ラストのチェットウィンドに比べ、クラシックな81ラストの丸みあるフォルムは、同じフルブローグでも全くの別物です。市場ではポリッシュドバインダーカーフを用いたモデルが多く見受けられ、特にダイナイトソール仕様のバーウッドは全天候対応のタフな一足として支持が厚いです。
ラスト:81

■SHANNON/シャノン

外羽根プレーントゥのシャノン(SHANNON)。高級靴の中でボリューミーなプレーントゥと言えば、オールデンの990、そしてチャーチのシャノン。この二強と思ってもらって大丈夫です。ちなみに、意外と話題に上がらないのですが、シャノン特有の仕様として羽根のサイドにスキンステッチの技巧が施されています。これはエドワードグリーンのドーバーの仕様として有名。その技術代もあり、定価は他のモデルよりも高価格となっています。
ラスト:224/103

5.コアなファンが持っている定番モデル

■RYDER3/ライダー3

チャーチの定番チャッカブーツモデル。ノーマルの”RYDER”がクレープソール、”RYDER3″がダイナイトソールの仕様。両方知名度の高いモデルではありますが、クレープソールはカジュアルでの使用が前提になるので、オンオフ兼用で使いたい場合はライダー3を選ぶと良いでしょう。尚、007「慰めの報酬」でジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグは全編を通してカジュアルスタイルに、このライダー3を使用しています。
ラスト:81

■BARCROFT/バークロフト

パンチドキャップトゥデザインのバークロフト、既に廃盤となってしまった旧チャーチ年代の名作モデルです。近年、復刻されての展開もありましたが、そちらもどうやら終わってしまったようです。基本的には新規で手に入らないという事もあり、当店でもこのバークロフトは競争率の高いモデルだと感じています。
ラスト:84

6.さいごに

この記事を書いている途中で、あるお得意様を思い出しました。「チャーチって、歳とっても欲しくなるんだよね」と言いながら買ってくれていたなと。本当に、チャーチは昔からのファンが多いなという印象です。タニノクリスチーとチャーチは、昔から高級靴を買っていた人にとっては、特に思い入れのあるブランドなのだそう。

そして今思えば、、知り合いの靴修理職人さんが、CBRで選んでくれた靴もチャーチ。某有名靴職人の元でアシスタントをしていた女性職人さんが選んだ靴も、やっぱりチャーチ。ライトなお客さんから、玄人の方、さらにはその道で仕事をしている方まで広く選ばれているチャーチというブランド。メジャーブランドでそういう支持を受けるブランドは、果たしていくつあるのでしょうか。いつの時代も、メジャーブランドは賛否両論出てくるのが常ですが、チャーチに関しては、”賛”の数が”否”を圧倒している。そういう印象を受けます。

そんな、数ある高級靴ブランドの中でも、異例な支持を得ているチャーチというブランド。皆さんも是非一足選んでみませんか?


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です