オールデン(ALDEN)

アメリカのシューズバトルロワイヤルを生き抜いた、オールデンとは。

オールデンの紹介は、多数の雑誌やWEBメディアで、本当に多く見られると思います。それもそのはず。この辺りは、オールデンだけというよりも、、日本人は無意識にアメリカ靴が大好きなのです。だから、どのブランドよりも、アメリカ靴はメディアで取り上げやすいので、今日まで、たくさんの記事がライターさんによって書かれてきました。

アメリカ靴というジャンルは、かねてより日本では人気が高い故、スポットをあてられることはごくごく自然な事。皆さんご存知、日本靴の代表格”リーガル”も、ルーツはアメリカ。また以前、リーガルの社長に聞いた事がありますが、その昔のまた昔、リーガルでフローシャイムを輸入していた時は、それはまあ、良く売れたそうです。

でも、そんな日本人が大好きアメリカ靴ブランドは、、、軒並み、買収、もしくは倒産と消失してゆき、現在では純粋なアメリカンドレスシューズファクトリーブランドと呼べるものは、オールデンとアレンエドモンズのみとなってしまっています。

多くのシューズブランドが消失していく中で、なぜオールデンに関しては純アメリカブランドとして生き残ってこれたのか。その部分を、今回は少し掘り下げて紐解いてゆきたいと思います。

1.とにかく”ラスト”や”サイズ感”のクセが凄い


出典:The Shoe Mart

オールデンをGoogleで検索したことのある方は、必ずと言っていいほど目にするこのオールデンラスト一覧。この画像の元ネタは、アメリカのThe Shoe Martというショップなのですが、このショップも本当に有名。オールデンのリジェクト品(ちょい傷品みたいなもので、要するにアウトレットです)を販売しているので、仕事でアメリカ出張に行く靴マニアがここによく立ち寄ります。

*もちろん普通にオールデンの靴を売っていますので、別にアウトレット屋さんというわけではありません。

左から細い~右へ大きいのような書かれ方をしていることで分かるように、オールデンのラストはサイズ感に若干差があります。あくまで感覚値にはなりますが、ラストによってはフィッティングがハーフサイズ程度変わる場合があります。

ただ、このあまりにも有名な、ラスト表。販売をしている身としていろいろなケースを見る限りでは、どこまで信用をして良いかは微妙です。いや、とっても微妙です。

この記事では深くは掘り下げませんが、Leydon(レイドン)ラストに関しては結構細いので、特に幅広甲高みたいな足型の方には、このラスト表では一番左に置いた方が良いです。

また、Modified(モディファイド)ラストですが、これに関しても、このサイズ表を見る限りでは大きいような書かれ方なのですが、実際のところ、土踏まず~甲の上部でしっかり押さえて履くようなラストなので、そのまわりが結構タイトです。なので、これも感覚値としては普通のUSサイズとして選んだ方がベターだと思います。

でも、これも結局、あくまで個人的な意見に過ぎないのかもしれません。正規代理店のラコタハウスさんでは、今まで自分が持っていたサイズ感覚値よりも大き目をお勧めされることが多々あるという話は、オールデン愛好家の中ではあいさつ代わりのような物。

要するに、オールデンのラストに関しては、本当に多くの人がたくさんの意見を持っており、それぞれに正解があって、一概にどれが絶対に正しいという事がない。それだけラストやサイズに関しては、深追いする要素があるという事なのです。

そこにワイズをDにするか、Eにするか、そのような要素まで入ってくると、、、いろいろありすぎて、天真爛漫な可愛い彼女に振り回されるような楽しみがあると、顧客さんが言っていたのがとてもしっくりきます。

2.コードバンの光り方が凄い

いろいろなブランドのコードバンに触れてきましたが、圧倒的にオールデンのコードバンは良く光ります。どちらかというと、すごく綺麗に光りやすいといった方が良いのかもしれません。

オールデンに関して、”コードバンを生産しているホーウィン社とオールデンは、いろいろ支えあった歴史があって蜜月の仲”であり、一番良いコードバンがオールデンに供給されている、といったようなストーリーを雑誌でよく見かけます。正直これに関しては裏の取れていない情報なので、間違いではないと思うものの、よく分かりません。

ただ、トリッカーズや日本ブランドのコードバン製品、また同じホーウィン社コードバンで有名どころですと、クロケット&ジョーンズやアレンエドモンズ、様々なコードバン製品に触れた印象として、オールデンのコードバンは光りやすいな、と思うのは恐らく感覚として間違いではないかと思います。

ここには、オールデンのコードバン製品は、コードバンを樹脂の類でコーティングしているという話も若干関わってくると思いますが、一旦割愛します。とにかくどこの靴よりもよく光る。これは間違いない事実だと思いますし、このどこよりも光るという事の求心力は凄まじいものがあります。

3.定番モデルの層が異常に厚い

今に残る老舗のシューズファクトリーブランドの特徴として、強力な定番(看板)モデルを抱えており、かつそれが息の長いロングセラー商品であるという事が挙げられます。分かりやすく言うと、トリッカーズのカントリーブーツは、とても良い例ではないでしょうか。もちろん、オールデンにもありますし、更にはその定番と言われるモデルの数も、他と比較してかなり多いという特徴があります。

以下が全てではありませんが、ざっとご紹介を。何を買えばよいか全くわからないけれども、オールデンの何かが欲しい。そんな方も是非参考にしてみて下さい。

■990■プレ―ントゥ(バリーラスト)/コードバン赤茶

その年ごとに人気モデルというのは若干変動するのですが、(よく雑誌でオールデン人気ランキング!等で掲載されている順位)このプレ―ントゥに関してはほぼ1位か2位です。それくらい本気の定番モデルですので、何でもいいからオールデンが欲しいという方は、とりあえずまずこれを買いましょう。

人気だ!以外のポイントとしては、このモデルに使われているラスト。このモデルに使用されているラストはバリーラストという、これまたオールデンの代表的なラストなのですが、これがまた本当に優秀です。なぜだか分からないのですが、幅広甲高の人にも、普通の人にも、逆に足が割かしシャープ目な人でも、結構まんべんなく合います。

もうすこし細かく言うと、何をしても全く合わない、煮ても焼いても食えないという状態にならず、ある程度の誤差があったとしても、靴下の厚みを変えたり等、工夫次第で気持ちよく履ける確率が結構高い印象です。なぜだかは本当に分かりません。でも、こういう合う人の多い、ストライクゾーンの広いラストは、基本的に名作と言っていいと思います。

■9901■プレ―ントゥ(バリーラスト)/コードバン黒

990の黒バージョンになると、9901という品番になります。これも、990と双璧で買って間違いありません。

余談ですが、先ほどの990がコードバンのバーガンディーに対し、9901がコードバンの黒。最後に”1”が足されると、同じラストの同じデザインで同じ素材の色違いになります。これは複数パターンがありまして、他のパターンは、Vチップの54321が黒になると54331とか、チャッカブーツでバーガンディーの1339が黒になると1340になったりと。要は、結構似た数字だと、色違いみたいな感覚で見てもらうと大丈夫です。

■54321■Vチップ(モディファイドラスト)/コードバン赤茶

このモデルも、オールデン人気ランキング!的な記事で、常に上位のモデル。セレクトショップで働かれているお得意様に、最近オールデンの状況ってどうです?と聞くと、このモデルは常時お客様からの予約伝票が束になっているようです。少なくともここ最近で、在庫潤ってますよ、と聞いた事はありません。

そして、この54321の特徴は、モディファイドラスト。履くと分かりますが、土踏まずがグン、と持ち上がる(これは口頭で伝わりませんので、試着をしてみて下さい)感覚で、たしかにすごく独特です。ただ、この”グン”が良い訳ではなく、ここの部分をしっかりホールドする事で、つま先の方に空間があっても変に足が前にズレて行かないようになっているという所が、このラストのポイント。足の指が太いとか、幅広で小指あたりが当たりやすい人には、結構履きやすく感じると思います。

ただそこばかりがフィーチャーされて、ゆったり目のような表現をされることがたまにありますが、絞めるところはしっかり絞めているので別にサイズを下げたりはする必要はないと考えています。

■986■コインローファー(ヴァンラスト)/コードバン赤茶

夏になると、とにかくずば抜けて需要が上がるモデル。ノーズが短めで、コロンとしたコインローファーはブランド問わず人気がありますが、こちらとJ.M.Westonの180はまさにそのようなローファーの代表作。

ちなみに、ヴァンラストに関しては、合う人合わない人が多少出ると思います。経験上では、割と幅甲がある人の方が、ぴったりくることが多い印象です。ただ、そういう傾向があるからか、このコインローファーに関しては、結構アレンジが加えられた別品番の物も多々存在しています。いろいろ探していると、この品番でなくても多数ありますので、どれかしっくりくるモデルの物があると思います。

■563■タッセルローファー(アバディーンラスト)/コードバン赤茶

これもコインローファーと同じく、夏になると全てのモデルを通り越して需要が高まるモデル。このモデルのコピーのような廉価版ブランドの商品は、いろいろな所で見かけると思います。

ちなみに、先ほどの986に関しては、少し足ががっちりした人の方が合いやすいと言いましたが、このアバディーンラストに関しては、逆にちょっと足が華奢な人の方が合うと思います。履き口あたりが割とタイトになっているので、ここでちょうど良く靴が止まる方には買って良かったなと思えるモデルかと。

逆に極端に幅広甲高な人には、あまり向いていないラストになると思います。甲が入らなくサイズアップすると、今度は踵が浮いて履けない、どのサイズ、ワイズで試しても合わない状態になりやすいです。

■4540H■タンカーブーツ(ミリタリーラスト)/コードバン赤茶

ミリタリーラストのコードバン/タンカーブーツは、ほとんど日本以外では見ません。そういう事もあってか、個人輸入、並行輸入がないため、流通量の関係で競争率が非常に高いです。これも、ちょうどマイサイズが店頭で見つかればラッキーと思っていいモデルかと。

ちなみに、このミリタリーラスト自体はちょっと見た目にシャープに見えます。しかし、実際のところ、細目~普通の足型の人にとってはオーソドックスなUSサイズで選べ、あまり癖がありません。幅広の方でも、そこまでどうしようもないといった苦労をしている印象はないです。凄く履きやすいラストと思って頂いて良いのではないでしょうか。

■1339■チャッカブーツ(バリーラスト)/コードバン赤茶

昔からある定番チャッカブーツ。990と同じストライクゾーンの広いバリーラストなので、ラスト、サイズ、ワイズさえ分かっていれば個人輸入でも買いやすく、比較的手を出しやすいモデルかと思います。

このモデルに関しては大変シンプルなのですが、イギリスブランドのチャッカブーツとはフォルムの方向性が全く違うので、そのあたりの個性に引かれて手に入れたいと考える方が多いと感じます。

4.特徴のある別注モデルが、収集欲をさらに掻き立てる

オールデンには上記の定番モデル以外にも、アレンジされた別注モデルというものが多々存在します。アレが違う、コレが違うとマニアの間で語られるのも、オールデンの楽しみの一つ。一時期、別注乱発状態のシューズブランドもありましたが、オールデンほど別注について語られているブランドは他にはないのではないかと思います。

ほんの一部ではありますが、とくに有名なブルックスブラザーズの別注品を紹介します。

■ブルックスブラザーズ別注/コインローファー

ブルックスブラザーズの別注品と言えば、まずはこちら、アンライニング仕様になっているコインローファー。このコインローファーのサドルの上、ちょうど履き口の部分のパーツですが、ステッチがないのが見て取れます。定番の986と比較すると分かりやすいかと思います。

定番986のこのステッチは、裏側のベージュ色のレザー(ライニングパーツ)と縫われているのに対し、このブルックスブラザーズ別注に関しては、そのライニングが縫い合わされていない、すなわちライニングのない、アンライニングの仕様となっています。

ちなみに、一応この仕様のオールデンはブルックスブラザーズの別注品なのですが、たまに日本のセレクトショップの別注でワンシーズンだけ等でやっていたりもするので、ブルックスブラザーズ限定というわけではありません。ただ、大半がここの別注品なので、お客様でこの仕様のコインローファーを履かれている方には、おっ、これは、もしや、ブルックスブラザーズのですか?とつい言ってしまいます。

■ブルックスブラザーズ別注/タッセルローファー

コインローファーともう一つよく話題に上がるのが、こちらのタッセルローファー。こちらに関してはそこまで極端な違いはないのですが、定番563と比べると、踵の部分にステッチがあるのが見えますでしょうか。これもやはりなのですが、こちらが入ったタッセルローファーを履いているお客さんがいると、販売者としてはついつい、おっ、いいですね!と反応してしまいます。

さいごに

いかがでしたでしょうか?オールデンの人を引き付ける魅力は、あえて一言で言うのであれば、”良い靴を履きたい”というお客さんの欲求に応えるだけに終わらなかった、という事ではないでしょうか。

これまで数多のブランドが消えていった中で、オールデンに関しては良い靴を作るのは当たり前として(縫製うんぬんは一旦置いておいてください)、

ラストやサイズの深追いをしたくなってしまうような良い意味での分かりにくさ、コードバンの靴磨き要素、定番と呼べる軸モデルの多さ、さらには収集を促す商品等、顧客を飽きさせない企業努力(仮にすべてを意図してやっていたら凄すぎる気がしますが)によって、今日までアメリカンシューズバトルロワイヤルを生き延びてきたのだと思います。